肝臓がん
症例1.
肝細胞がん切除後の再発
慢性C型肝炎から肝硬変となり、さらに肝癌になった場合、ラジオ波焼却や切除しても再発を繰り返し、しかもその間隔がしだいに短くなっていくのが特徴です。患者さんはこのような肝硬変の経過観察中に径2cmの肝細胞がんが見つかり切除手術をしました。その6年目に約1.5cmの再発を認め2度目の手術をしました。しかし、その半年後に径1.0cmの2度目の再発が疑われましたが、今後も癌を繰り返す高癌化状態と考えられ、本人の強い希望で手術や抗がん剤は使わず、免疫細胞療法だけで治療することになりました。
治療直前の造影CT写真(写真1:左)に円で囲った部分に淡く白く見えるがんが見られましたが、3ヵ月後のCT写真(写真1:右)のようにほぼ消失しました。

この患者さんは、がんが消えた後もリンパ球療法を続けましたが、図1に示すように(治療後16ヶ月まで表示)、その後肝機能(AST)が徐々に正常化し、手術後も高値だった腫瘍マーカーAFPが投与10回目以降から急速に下がり正常化しました。くすぶるような肝炎状態もなくなり体調が改善し、普通の生活を楽しめるようになりました。免疫細胞療法を初めて30ヶ月がたちますが、肝機能、AFPは正常値を維持し、その後再発は起こっていません。免疫細胞療法も 3〜4ヶ月に1度の割合に減り、からだの免疫機能は高く維持されています。

からだの免疫強化
この患者さんは、免疫細胞療法以外はサプリメントを含めて何もせずに、肝機能が正常値にもどり、さらにAFPも低下し正常となりましたが、その間にからだのなかの免疫力はどのように変化したのでしょうか。
1)NK細胞の増加
投与した活性化リンパ球150億個のうち30〜40%がNK細胞で、残りが活性化Tリンパ球でした。この投与によって、からだにどんな変化が現れたか血液をとって調べてみると、投与直前に比べ3日後は血液中NK細胞が8%から24%に約3倍に増え、1週間後、2週間後でも2倍近くを保ちました(図2)。

2)がん攻撃分子NKG2Dの増強
また、NK細胞やTリンパ球の一部(CD8陽性Tリンパ球、NKTリンパ球など)には、NKG2Dというがん細胞を攻撃する分子を細胞の表面に持っていますが、さまざまな種類のがん患者さんでこのNKG2Dが減少しており、がん細胞への攻撃力が弱っています。肝細胞がんでもNK細胞のNKG2Dが低下し、 NK細胞がうまく働かないことが報告されています。免疫細胞療法を始める前と治療6ヵ月後に、この患者さんの血液をとって、NK細胞とTリンパ球の NKG2D陽性率を調べ比較しました(図3)。NKG2D陽性率は治療前の38%から、治療6ヵ月後には60%に上昇していました。細かくみると、NK細胞だけでなく、Tリンパ球の陽性率がとくに上昇していました。つまり、肝がんを攻撃するNK細胞とTリンパ球の免疫力が強化されたと考えられます。

この患者さんでは、高活性NK細胞療法によって、からだ全体のNK細胞の強化だけでなく、NKG2D陽性Tリンパ球とCD56陽性Tリンパ球(ここでは説明しません)が上昇したように、Tリンパ球にも大きな影響を与え、免疫力が強化されたといえます。現在は3〜4ヶ月の投与間隔で治療をおこなっていますが、このような長い間隔でも高免疫力を保っています。このことが、長期にわたって肝がん再発を抑えているかもしれません。






