膵臓がん
症例2.
高齢で手術ができず、抗がん剤少量と高活性NK細胞療法で元気に1年を経過
80歳代の患者さんです。腹痛と下痢のため検査したところ、膵頭部に直径2.5cmの腫瘍があり、血管を巻き込むステージ4aの進行膵がんと診断されました。幸い遠隔転移はありませんでしたが手術はできず、高活性NK細胞療法を希望されました。そこで、飲む抗がん剤TS-1を1日40mgで1週間服用し1週間休薬という少量投与を一緒に併用しながらNK細胞療法を開始しました。TS-1は負担の少ない投与量のため、胃の軽い不快感以外は問題となる副作用もなく続けることができました。免疫細胞療法は最初の数回を2週間隔にし、以後は4週間隔、さらに6週間隔と伸ばしました。治療を続けるうち食欲ももどり普段と変わらない生活ができるようになり、進行膵臓がんと診断されてからもう1年以上がたちました。
治療開始後の腫瘍マーカーCA19-9の変化を図1に示します。治療2ヵ月後にCA19-9が低下し、その後も1000前後を維持しています。定期的なCT検査でも、がんは小さくならないものの、大きくもならず、また転移もなく、進行がほぼ止まった状態がつづいています

この患者さんは最初の6回の投与で820億個(1回平均137億個)の活性化リンパ球が入り、そのうちNK細胞が60%を占めました。投与1回あたりの NK細胞数は平均82億個で、その他は活性化Tリンパ球(おもに細胞傷害性Tリンパ球)でした。これだけのNK細胞、活性化Tリンパ球が入ると、からだを循環している血液中のリンパ球にも変化が出てきます。
まず、リンパ球数が治療前1000個/μlから2倍近くに増えました(図2)。

その増えたリンパ球をさらに調べると、NK細胞の割合が16.9%→36.3%に上昇し、NK活性も36%→57%に増強しました。同時にNKG2D陽性リンパ球も39.9%→61.5%と増加しました(図3)。

開始前にある程度の免疫力は保持していましたが、治療で免疫力はさらに強くなっています。少量のTS-1を併用することでがん細胞の免疫感受性をあげ(がん細胞が免疫細胞に攻撃されやすい状態にする)、そこに大量の高活性NK細胞と活性化Tリンパ球を投与してがん細胞を攻撃し、さらに血液中のNK細胞を増やし活性もあげ、からだの免疫力を強化したと考えています。今後さらに、このような良好な状態が続くか経過をみなければなりませんが、これまでの治療で進行が早いといわれる膵臓がんは「休眠状態」になったようです。
高齢者のがん:高齢者のほうががんの進行が遅いといわれます。しかし、60歳代と80歳代のがん患者さんのどちらが経過がよいかを調べると、60歳代のほうがよかったと報告されています。80歳以上では抗がん剤の使用が難しくなること、体力や抵抗力が弱いためです。このように、治療の難しい膵臓がんのある高齢者でも、副作用がでない程度のごく少量の抗がん剤と高活性NK細胞療法を組み合わせて治療することが可能です。






